田中帽子店ブランド紹介
田中帽子店は、埼玉県春日部市(かすかべし)に拠点を置く、日本で数少ない麦わら帽子を中心とした天然素材の帽子を製造する帽子工房です。創業は明治13年(1880年)、140年の歴史を誇ります。同店の帽子には、細部にわたって緻密な職人技と心づかいが込められています。創業から現在に至るまで、昔と変わらない製法で伝統的な麦わら帽子を作りつづけています。
麦わら帽子の伝統産地・埼玉県春日部市で140年の歴史を誇る帽子工房
明治13年(1880年)に創業された田中帽子店は、日本で数少ない、麦わら帽子を中心とした天然素材の帽子を製造する帽子工房です。現在は6代目に引き継がれています。
田中帽子店の工場は、埼玉県東部の春日部市にあります。古利根川という大きな河川がある春日部市は、古くから米や麦の生産地として栄えていました。
この地域では、明治の頃から麦を使った帽子づくりが盛んになり、現在においても伝統の技術を継承した麦わら帽子を作りつづけています。その代表と呼べる存在が、田中帽子店です。
明治時代の創業当初は、麦わら帽子の材料である「麦わら真田」を製造して海外に輸出していました。「麦わら真田」は、7本の麦の茎を手で編み、真田ひも状に加工したものです。
明治30年(1897年)頃、ドイツから日本に製帽用のミシンが輸入されるようになり、田中帽子店でもミシンを使った本格的な麦わら帽子の生産が始まりました。
当時から、現在の春日部市にあたる地域には麦わら帽子に関わる会社が多く存在し、のちに麦わら帽子は春日部市の「伝統工芸品」として認定されることとなります。
細部に至るまで高度な職人技と心づかいが込められた、田中帽子店の帽子
麦わら帽子の製造は、シート状の材料をプレスして成型する他の帽子と異なり、材料をミシンに取り付けて帽子の形に縫製したのちプレスして成型するという、大変手間と時間のかかる作業になります。
田中帽子店の熟練の職人は、1本の麦わら真田を円状に重ねて帽子の形に縫い上げていきます。その造形美はとても見事です。また重なった部分に程よい伸縮性が生まれることでかぶり心地もよくなります。
麦わら帽子は、天然素材ならではの通気性のよさがあり、涼しく感じられる帽子です。そうした特長から、麦わら帽子は長い間、多くの農家の方々や、幼稚園・保育園の子供たちに愛用されてきました。
また最近では、実用品としてだけでなく、おしゃれなファッションアイテムとしても多くの注目を集めています。
田中帽子店の生み出す帽子には、細部にわたって確かな職人技が施され、かぶる人を想った細やかな心づかいが込められています。明治時代の創業から今に至るまで、昔と変わらない製法で、伝統的な麦わら帽子を作りつづけています。
田中帽子店の麦わら帽子ができるまで
縫製
水に浸して柔らかくした麦わら真田を帽子用ミシンで縫製します。時折、木型で大きさを確認しながら慎重に縫い進めます。熟練の職人でなければ美しい形に仕上げることはできません。
寒干し
縫いあげた麦わら帽子を天日干しします。特に寒い冬場の乾燥した時季に行われることが多いため「寒干し」と呼ばれ、一面に並ぶ麦わら帽子は春日部市の冬の風物詩となっています。
型入れ
金型を取り付けた専用の型入れ機を使って、水圧でプレスして帽子を成型します。クラウンとブリム、別々の木型を組み合わせて成型する場合もあります。帽子に個性を与える工程です。
装飾
型入れ後、汗止めスベリやハットリボンなどの装飾を施していきます。全て職人の手作業で行い、帽子のアクセントとなるリボンも職人が一つひとつ丁寧に縫い付けていきます。
仕上げ
麦わら真田の細かな「ささくれ」は、チクチクしてかぶり心地を損ないます。そのため仕上げとして、これを取り除きます。一つひとつ手のひらでさすって確かめながらカットしていきます。
田中帽子店の帽子の魅力を知るキーワード
麦わら真田
田中帽子店の麦わら帽子に使われる素材は、主に大麦の麦茎。それを7本組んで真田ひも状に手編みした「麦わら真田」を材料としています。
麦わら帽子は、布帛(ふはく)のクラッシャブルハットのように折りたたむことができないため、持ち運びにおいて多少の不便さはありますが、麦わら素材ならではの魅力があります。
それは、天然素材特有の通気性と涼しさです。
麦茎には、繊維自体に目に見えない無数の穴がいくつもあり、それが空気穴の役割を果たすため通気性に優れています。
また麦わら帽子の涼しさは、多くの農家が愛用していることでも実証済みで、少し硬めの素材でブリム(つば)が垂れづらいことから日除け用としても重宝します。
鬼麦
田中帽子店が製造する麦わら帽子のうち、「鬼麦」と表現されているものがあります。
鬼麦は、麦わらを素材として、通常の麦わら真田とは異なる編み方で作られた貴重な材料です。鬼の歯のように粗くギザギザとしていることから鬼麦と名づけられました。
特徴は、真田自体が歯のようにギザギザとして粗いこと。一般的な平らな麦わら真田と違ってざっくりとした質感になっています。
そのため帽子の形に加工すると、まるで魚の鱗(うろこ)のようにも見え、野性味あふれる武骨な雰囲気に仕上がります。
鬼麦を用いた麦わら帽子は、通常の麦わら帽子よりも、しっかりと堅牢な作りになります。